これからの“壊さない住宅文化”を考える

M様(+Modifyドナー住宅ご提供) × アサヒアレックスホールディングス株式会社 代表取締役 石倉茂雄 × ReeL株式会社 代表取締役 弦巻大輔

一軒の家をめぐる物語の最後は、三者による座談会です。家を託すM様ご夫妻、施工を担うアサヒアレックス石倉代表、設計思想を担うReeL弦巻代表。立場の異なる三者が、これからの住宅業界と、信濃町という街の未来について語り合いました。

住宅着工数の減少と、「新築中心」への違和感

「住宅着工数は、ピーク時の年間130万戸から、最近では80万戸を切ると言われています。数年のうちに50万戸台になるとも予測されています」。石倉代表はそう切り出します。「なぜアメリカのように、50〜60年前に建てられた家がリノベーションされて新築と同じ価値を持つ、という状況が日本ではなかなか広がってこなかったのか、ずっと不思議に思っていました」

弦巻代表も続けます。「絶対的な性能では、新築の方が高いのは事実です。ただ、価格が上がりすぎて多くの人が手に入れられない状況になると、1棟あたりの性能が高くても、社会全体で見た環境性能は上がりません」。+Modifyが目指すのは、性能で新築の9割、価格で新築の6割。「新築・リノベーション・+Modify、それぞれに良さがあります。ユーザーがライフスタイルに合わせてフラットに選べるようになるのが理想です」

名もなき職人たちがつないできた仕事

座談会は、思いがけない発見の場にもなりました。M様邸を手がけた大工・寒河江氏には、実は若いいとこの職人が同行していたことが判明します。「寒河江さんの下で修行したいと言ってうちに来てくれました。丁寧な仕事をしてくれるコンビでした」と石倉代表。

さらに弦巻代表は、M様邸完成の1年後にアサヒアレックスへ入社し、現場監督の坂栄氏のもとで働いていたことを明かします。「優しくて、寡黙で、職人肌の方でした」。M様(奥様)も「控えめな方で、でも腕はしっかりしている、という印象でした」と重ねます。「本当にいろんなところでつながっているんですね」とM様(ご主人)は驚きを口にしました。

「うちは床から壁から、全部現場で組み上げていきます。最初の骨組みからしっかり作るので、最初の仕事がとても大事なんです」と石倉代表。M様(奥様)も「今でも床がどうこうということは全然なくて、本当にしっかりしているなと感じます」と、30年を経てなお変わらぬ確かさを語りました。

100年住宅という、まだ見ぬスタンダード

「ヨーロッパやアメリカでは、古い住宅を大事に使い続けていますよね」とM様(ご主人)。石倉代表も「100年住まわれている家なんて、いくらでもあります。躯体さえしっかりしていれば、本当にそれくらい持ちます」と応じます。

弦巻代表は言います。「M様のお宅も、+Modifyをかけることで、そこからさらに30年、40年と寿命が伸びていきます。100年住宅に近づいていく、というイメージです」。設計者として大切にしているのは、「当時の時代背景や、つくり手の思想、住まい手のこだわりを一度全部否定してゼロに戻すのではなく、見つめ直して『どこを残し、どこを現代的に変えるか』を考えること」だといいます。「できるだけ少ない手数で最大の効果を発揮しながら、現代の暮らしにフィットさせていく。そのプロセスこそが、思想を受け継ぐ建築だと思っています」

信濃町という街に、子どもたちの声を残したい

+Modifyが広がった10年後、どんな街になっていてほしいか。M様(ご主人)は、信濃町という土地への想いを語ります。「土地の価格が高く、若い人からするとハードルが高いかもしれません。手の届きやすい形で住める選択肢が増えないと、郊外ばかりに人が増えて、中央区から人が減っていく。若い人たちが信濃町のような場所にも住めるようになって、子どもたちの声が聞こえるにぎやかな街が残っていくといいなと思います」

M様(奥様)も「子どもがいる家や、いろいろな世代の方が一緒に住んでいる街は、明るくていい」と語り、この環境を次の世代へ引き継いでほしいと願いを込めます。弦巻代表は「信濃町のポテンシャルは本当に高いと思います。地盤も良く、立地も良い。こうしたエリアの住宅を+Modifyしていくことで、まち全体の価値も高まっていく」と応じ、石倉代表も「地盤は本当に最高ですね」と頷きました。

それぞれの立場から、次へ向かう人たちへ

最後に、三者それぞれが読者へメッセージを送ります。

M様(ご主人)は、今回の住み替えを「終活の始まり」と表現しました。「自分たちのどちらかが倒れてから家を処分しなければいけないとなると、本当に大変です。そうなる前に、自分たちの責任で次のステージに進むというのは、大事なことだと思います」

M様(奥様)は、家との付き合い方が年代によって変わっていくことを教えてくれました。「子どもたちを育ててきた思い出の家が、これからは別のご家族の手に渡って、新しい楽しい暮らしの場になってくれたら、本当にうれしいです」

石倉代表は、これから家を建てる世代に向けて語ります。「新築だけでなく、+Modifyのような既存の良い家を活かした選択肢も、ぜひ検討していただきたいです。価格を抑えつつ良い環境で暮らせる。子育て世代にもぴったりの商品だと思っています」

そして弦巻代表は、こう締めくくりました。「家を託してくださる方たちには、『あなたが大切にしてきた家は、僕たちがきちんと磨きをかけて、次の世代へ良い形でリレーします』とお伝えしたい。これから家づくりを考える方々には、新築・リノベーション・+Modifyという三つの選択肢をフラットに見て、自分たちの暮らし方や価値観に合うものを選んでいただければうれしいです」

壊すのではなく、託す。一軒の家をめぐる物語は、これからの住宅文化への、静かな問いかけとなりました。

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